この作品には若干性的表現があるような『気がします』。(:.;゜;u;゜;.)
問題は無いと思いますが、一応性教育を受けた方だけ読み進めて下さい。
■ユーノ〜親トナルタメニ〜・なのは〜母ユエニ、妻ユエニ〜■
ミッドチルダのとある住居に、つい最近結婚したばかりの夫婦とその養女が住むようになった。
この一家の姓はミッドでは唯一の漢字を使った姓、『高町』という。
夫の名はユーノ、妻の名はなのは、養女はヴィヴィオ。
数奇な運命が築き上げた、とても特殊な境遇の一家だった。
これは、そんな3人の人生に満ちる、ちょっとしたエピソードの1つ。
養女が要るとはいえ、なのはとユーノは新婚ホヤホヤ。
出会ってからの10年、まったく進展がなかったのが嘘の様に毎晩お互いを求めていた。
今夜も、寝室にまだ幼い養女を寝かしつけた後、二人でリビングへと抜け出し、
この為に、とは言わないものの、予め計算に入れて購入した
二人が寝転べるくらいに大型のソファの上で愛し合い、互いに裸のままその余韻に浸っている最中だ。
この夫婦にとっては、いつもと変わらぬ光景…が、この日は少々違った。
ユ「なのは、どうしたの?」
な「え?」
ユ「ちょっとだけ、落ち込んでるでしょ?」
な「――ばれちゃったか」
その日のなのはは、いつもと違って表情を曇らせていた。
だがソレはほんの僅か眉を顰める程度。
薄暗い部屋の中、しかもユーノは眼鏡を外している、もし顔を見られてもバレないだろう、となのはは思っていたが、
な「何で分かったの?」
ユ「これでも、なのはに関しては桃…お義母さんや恭也さんの次くらいには理解してるつもりだからね」
どうやら甘かったらしい。
ユ「なのはの機嫌くらいなら、顔を見なくても解るよ?」
そう囁きながら視線を天井から、自分の胸板を枕にしているなのはへと移すユーノ。
彼にとっては、顔を見る必要すらない事だった。
ユ「話してくれるかな?」
な「・・・うん」
なのはは一瞬迷ったが、さっきのやり取りを思い返し、素直に白旗を掲げる事にした。
落ち込んでいるのがばれている以上、黙っていても心配させるだけな上、
たとえ黙っていても、ユーノならば何を考えていたのか気付いてしまうかもしれない。
ならば話してしまうべきだろう、と結論を出したのだ。
な「ちょっとだけ、ちょっとだけね」
話す事でユーノを傷付けるかもしれないとは思ったが。
な「やっぱり赤ちゃん欲しいなァ、って」
ユ「・・・ゴメン、なのは。もうちょっと時間くれないかな?」
なのはの予想道理に、申し訳なさそうな、悲しそうな表情になるユーノ。
どうやって取り繕うか、となのはは考えたが直ぐには上手い言葉が見つからず、
ただ一言
な「うん、待ってる」
とだけ返した。
今現在、なのはとユーノの間に子供は生まれることは無い。
今のユーノには生殖能力が無い為である。
ユーノはなのはとの結婚の前に一時的に生殖機能を無くす為の手術を受けたのだ。
まだ、ヴィヴィオの事を自分の娘としては見れていない。
ヴィヴィオの事をちゃんと娘として見れるまで、
もし自分の子供が出来ても、同じ様に愛せるという自信が持てるまで子供は作りたくない。
確かに養子を取るならちゃんと自分の子供として愛せるようにならなくてはならないし、
自分の血を引く本当の子供が出来たとしても、隔たり無く愛せなくてはならない。
それは、なのはも同意見だった。
ヴィヴィオを自分の子として愛せるかという事には既に不安は無いが、
もし自分達の間に子供が出来たら、ヴィヴィオとその子に差を付けずに愛せるかどうかはなのはにも解らなかった。
ヴィヴィオの事を自分の子として愛せと、ユーノに強要するのも間違っているし、
なのはと違い、ヴィヴィオと接する機会の少なかったユーノに対し、
まだそう思えないのを責めるのは、明らかにお門違いというものだ。
明らかにユーノとヴィヴィオが親子になるのには、まだ時間が必要だった。
もし今の状態で、なのはとユーノの間に子供が出来れば、
ユーノの愛情の大半がその子へと向けられ、ヴィヴィオの事を蔑ろにしてしまう可能性は十分にあった。
ユーノの言う通り、実の子を持たないというのは、
今の自分達と、ヴィヴィオの為には在ったほうが良い条件かもしれない。
施した手術も、精子が体外に出る前に死なせる機械を埋め込むというモノで、
その気になれば、いつでも摘出し元に戻せるらしく、
気持ちが固まるまでの確実な避妊の為の手段に過ぎなかった。
かなり悩みはしたが、既に手術後であったし、
理由も自分達にとって、どちらかと言えば都合が良い事だった。
その上、
元々ユーノとの子供も今すぐに欲しいと思っている訳でもなく、
自然に出来るのを待つ位の気持ちでいた為、暫くは子供を作らない事を了承した。
だが――。
今のなのはには、ソレが最良の選択だったとは思えなくなっていた。
なのはにも信じられなかったが、結婚してからもユーノへの想いは益々深まり、
今では先程のように、『ユーノの子供を生みたい』という欲求を抑えきれなくなってきているのだ。
それを悪いとは思ってはいないが、このままこの想いが強くなっていけば、
ヴィヴィオよりユーノとの子供の方を大事にしてしまうのは自分の方になってしまうのでは?
という恐怖を覚えているのは確かだった。
幸いな事に、ユーノはヴィヴィオに対し、実の親以上の親馬鹿っぷりを見せつつある。
その事を考えれば、ユーノの言葉通り「もうちょっと」の時間で問題は解決しそうな気がする。
そう考えると、なのはは少し安心した。
な「へっくし!」
安心したら急に寒さを感じて、くしゃみが出た。
ユ「うわ!?」
なのはの突然のくしゃみに驚くユーノ。
まあ、密着している相手にくしゃみをされたのだ、被害の全てを受けた事を考えれば当然だろう。
な「ご、ごめんなさい」
ユ「いや、別に気にしてないけど。裸で長く居すぎたね、早くパジャマ着てベッドに戻ろう?」
な「うん」
ヴィヴィオともお揃いのパジャマを着て寝室へ戻り、
地球の常識で考えれば少々大きすぎるベッドの上で、既にぐっすりと眠りに就いているヴィヴィオを挟んで川の字で眠る。
なのは達にとっては、いつもと変わらぬ光景…が、この日は少々違った。
その日、なのはが見た夢は、とても幸せそうな笑顔を浮かべた4人の一家の夢だった。
この夢が正夢になる事はなかった。
夢に出てきた一家は、4人ともなのはの夢よりも、ずっと幸せそうな笑顔で彩られて行くのだから。