友達? なのはとユーノ
■彼女であるが故に
それはなのはやユーノが管理局で働き始めて暫く経ったある日の事。
ユ「アッなのはいらっしゃい」
無限書庫で仕事中のユーノになのはが会いに来た。
な「ユーノ君、三日ぶり」
ユ「うん、三日ぶり!」
パンと互いの手を合わせて何日ぶりに会ったかを言い合う、
管理局に入ってから自由に会うことが少し難しくなった二人に
いつの間にか出来た挨拶の仕方だ。
ユ「まだ食事には早いけど・・・今日は別の用?」
な「えっと、またアレをお願いします」
ユ「そっかアレ・・・か」
な「うん、ごめんね」
ユ「・・・少しは落ち着けた?」
なのはの頭を優しく撫でながらユーノが問いかける。
な「うん・・・グスッ・・・ありがとう、ユーノ君」
10分ほどなのははユーノの腕の中で泣いていた。
な「グスッごめんね、また服汚しちゃって」
なのはは時々こうしてユーノのところへ泣きに来る事があった。
ユ「いいよこのくらい、それより何があったのか教えてよ」
な「ミッドチルダの、グスッ時空航行船を盗んで別の世界で売ってた人達の逮捕に参加したの」
そして、なのはが泣きに来るのは決まって出動があった後だった。
な「・・・・・・・でね、グスッその時に相手が銃を撃ってきて、
私と一緒に突入した人とかエグッ五人も、ヒック、撃たれちゃってェ・・・」
AAAランクという驚異的な戦闘能力を誇り、
同年代の中では強靭な精神力を持ってはいるが、
なのははまだ10歳の少女である。
自分の怪我ならまだしも、
他人の死や死ぬかもしれないような怪我に直面し、
平気でいられる筈はなかった。
ユ「その人達は?」
な「重傷だけど死ん、ングッ死んじゃったりはしないって」
ユ「そっか良かったね」
な「でも、いっぱいグスッ血が出てた」
ユ「そう・・・怖かったね」
な「うん・・・う・・ん、ふえぇぇ」
話している内に感情が昂ぶったらしく、再び泣き出すなのは。
ユ「なのは、いくらでも泣いていいから」
そんななのはをユーノはしっかりと抱きしめた。
ユ「何度もすみません、僕の気配りが足りなくて」
『ううん、気にしなくて良いわよ、こっちの方こそなのはが迷惑掛けちゃって』
ユ「いえ、迷惑なんて、手伝ってもらえて大助かりです」
『そう?だったら良いんだけど』
ユ「それじゃ、今日もなのはは管理局の方に泊めますので」
『は〜い、なのはの事ヨロシクね?ユーノ君』
ユ「はい、分かってます。それじゃ」
『バイバ〜イ、また泊まりに来てね〜』
ピ!
自分の携帯(携帯電話に手を加え時空間通信を可能にした物)を操作し
ユーノは高町家との通話を切った。
ユ「やっぱり桃子さん達にはバレてるのかな?」
そう呟きながらユーノは自分の腕の中で寝息を立てている少女に目を向けた。
なのはは泣き疲れて眠ってしまっていた。
なのはがこんな風に眠ってしまった時、ユーノはいつも、
なのはの家族に「仕事を手伝ってくれていたが、疲れが溜まっていた所為で寝てしまった」と
連絡し、そのまま管理局内の自室に泊めていた。
最初はなのはの家や魔法の事を知るなのはの友人の家に運ぶ事も考えたが、
管理局にいる間、当然なのはは武装隊の制服を身につけている。
学校や塾から直接管理局に来ているなのはは学校の制服を管理局に置いたままにする事になる。
早朝からなのはを管理局に、しかも制服を取りに来る為だけに来させるのは気が引けた。
それになのはは自分が辛いからといって他人を心配させるのを嫌がるところがあった。
その為なのはの家族や友達に、なのはが辛くて泣いているという事を
なのは自身は知られたくないだろうと思い、
仕方なく高町家には嘘の連絡を入れ自室に泊める事にしたのだった。
ユーノに慰めて貰う為に来るのもなのはが自分からはじめた事ではない。
なのはが最初に重傷者を目にした直後に偶然会ったユーノが、
様子が妙だったなのはを心配の余りしつこく問いつめ、
動揺していたなのはが泣いてしまったという一件があったからだ。
怪我の巧妙とでも言うのか、その時、泣く事で我慢が出来なくなったなのはは
自分の気持ちを洗いざらいユーノに喋っていた。
そしてユーノは話を聞き終えた後、なのはが泣き止むまでずっとなのはを抱きしめ続けていた。
それ以来なのはが現場に出たと聞くと、
ユーノがなのはを呼び出し感情のままに泣かせてやる、
ということが何回か続き、次第にユーノに対しては辛さを打ち明けるようになったなのはが
今ではこうして自分から泣きに来るようになったのだった。
いつもの様になのはを自室に備え付けられていたベッド乗せ、
ユーノはスクライアから送ってもらったハンモックへ寝そべり眠っているなのはへ
ユ「お休み」
と声を掛け、ハンモック横の壁に貼り付けたスイッチで照明を落とした。
眠りに向かって薄れていく意識の中、
ユ(いつかなのはが家族や友達に対しても素直に辛いって言える様になればいいのに、
でも、そうなったら僕の役目も終わりか・・・それはそれで少し寂しいかも)
ユーノはそんな事を考えていた。